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サビアン日記304 -1 牡羊座06度から10度 チルチルの国ミチルの国

牡羊座06度
●一辺が明るく輝いている四角
★加圧して反作用を起こす

牡羊座07度
●二つの領域で同時に自己表現する男
★天と地と 抽象と具象を行き来する

牡羊座08度
●女性の大きな帽子のリボンが東の風に揺れている
★力を抜いて風の音を聴く

牡羊座09度
●水晶球をのぞく人
★そこにあるものから、世界のしくみを見出そうとする ああ水晶の玉は地球のミニチュアだなあ、とか

牡羊座10度
●教師が伝統的な象徴イメージに新しく言い換える
★自分で見つけて自分で表現する


ジオセントリック(地球から太陽をみる)牡羊座06度から10度のときの
ヘリオセントリック(太陽から地球をみる)の流れ

天秤座06度
●内的なヴィジョンが形になっていくのをただ見つめている男
★固定した役割、立場などに固執しないでいるから、共同でヴィジョンが実現する

天秤座07度
●ヒヨコに餌を与え鷹から守る女
★ドアを大きく開きすぎて、風通しがよすぎて私の領域が消えそう

天秤座08度
●廃墟の暖炉で火が燃えている
★自分を自分にしている最初の動機が湧き上がってくるのを待つ

天秤座09度
●三人のマスターの絵
★先人の書物に学ぶ もう亡くなっている人で三人以上、そうじゃないと偏るから

天秤座10度
●急流を抜けてカヌーが静かな水面に辿り着く
★知識と体感を合わせて本当の知を完成させる

天秤座06度から10度 太陽から地球へ
ぎりぎりまで空っぽに透明になって、それでも自分を自分の色にまた戻そうとする炎を見つける





牡羊座06度から10度のおはなし

 チルチルの国 ミチルの国


 1 うんもんも

 うんもんもは毎朝ひとりでおさんぴします。

うんもんも、というのはその子の名前です。おさんぴ、はおさんぽ、の、ぽをぴに変えたもので、お散歩ではなくお散飛、ふらふら飛ぶこと、です。そうです、うんもんもは飛ぶことができるのです。といって、うんもんもたちにとって、飛ぶことはそう特別なことではありません。だけれども、うんもんもは鳥というわけではない、ぬいぐるみです。

 うんもんもは全身が白い短い毛に覆われています。ぱっと見た感じ、大きめの白いウサギが丸まってこちらにお尻を向けている、そんなふうです。でもうさぎみたいに長い耳はなくて、まん丸い全身の、中心より少し上に黒い目が二つ離れ気味にくっついています。まん丸だと、ころころ転がってしまうからか、身体の下側が瓶の底みたいに平らになっています、そして、目よりやや下の位置の両脇に手のような、耳のような、お魚のひれにみえないこともない……そういう半円形がちょこんちょこんとくっついている、うんもんもは、そんな形をしています。そう、うんもんもは、大きな太った埴輪に似ています。

 ぬいぐみはふつう飛ばないかもしれません。でもうんもんもは飛びます。飛ぶというより浮き上がって移動する、それってなんだか幽霊みたいですけれど、うんもんもは、やっぱりぬいぐるみに見える。見えるけれども、飛ぶぬいぐるみなんて聞いたことがないから、うんもんもはぬいぐるみではないのかもしれない。あるいは、人間が、ぬいぐるみが飛べることに気が付いていないということなのかもしれない、もしくは、ほとんどのぬいぐるみはやはり、飛んだりはしないのだけれど、うんもんもたちはそのなかの飛べる種である、ということなのかもしれない。まあ、ともかくうんもんもは、見た感じぬいぐるみだし、住処としているのは、とある人間の女の子の部屋のベッドの片隅。それもいかにもぬいぐるみらしい。


 うんもんもは毎朝ひとりでおさんぴするのだけれど、本当はひとりでなど出掛けたくはないのです。でも、うんもんもの仲良しは、飛べるくせに高所恐怖症であったり、朝昼は眠っている夜行性だったり、それに何より、単独行動を好むタイプなのでした。それで、うんもんもはひとりでおさんぴするようになったのです。ひとりでいることは好きではないけれど、おさんぴと朝いちばんの空気は大好きだから。

うんもんもがぶつぶつ何か言っています。

 あー、朝の空気ってなぁんて気持ちいいんだろう、まだみんな眠っているんだからなあ……お日さまがまだ昇る前の、この空気がいちばんなのになー。もーいやになちゃうんだ、みんな寒い寒いっておふとんのなかで丸まってるんだからねー、うんもんもは寒いのだーい好き、ふんふふーん……、今日はお空まっしろだなあ……。

 朝日の昇る直前の薄明かりの今日の空は、一面雲に覆われています。まっしろな空を見上げて、うんもんもは仰向けに上昇していきます。まっしろな空にまっしろなうんもんも。ぷかぷか浮かんでぷかぷかぷかぷか。どんどん、どんどん高く昇っていきます。

 うんもんもが歌っています。

 まっしろしろのお空
 どこまでどこまでお空かな
 どこまでどこまで飛んでこう

 まっしろしろのお空はお空は
 そのうちそのうち宇宙になるよ
 お空はお空は どこからどこから
 宇宙に宇宙になるのかな

 お空はお空は まっしろしーろ
 宇宙は宇宙は まっくろくーろ
 まっしろしろはまっくろくろに
 どこからどこからなるでしょう

 うんもんもは高く高くずんずん昇っていって、もう下を見ても、うんもんもの住む街も見えなくなってしまいました。 上も下も、右も左も、まっしろしろです。もっともっと昇っていったら、なんだかもうお家には帰れないような気がするけれど、なぜだか、ぷかぷか浮かんでいることが心地よくて、昇っていくことが止められないのでした。


 まっしろしろなお空
 うんもんももまっしろだからね
 うんもんもはお空に
 とけていくのかもしれないな
 とけちゃったら
 もうみんなに会えないな
 でもね
 うんもんもは
 お空ぜーんぶに広がるんだから
 いつでもどこでもだれにでも会えるよ
 
 うんもんもは目を閉じました。

 あれ
 いままでぜんぶまっしろしろだったのに
 こんどはぜんぶまっくろくろなんだー
 わあ
 まっしろしろななかの
 うんもんものおなかのなかは
 まっくろくろなんだねーえ

 まっくろくろでどこまでも
 どこまでもどこまでも
 お空みたいに果てがない
 
 お空はお空は まっしろしろ
 まっくろくろは うんもんものなか
 まっくろくろで果てがない
 ああ
 うんもんものなかは 宇宙なんだ

 宇宙 宇宙 宇宙には
 ぴかぴかしてる星星が
 うんもんものおなかにも
 星たちがぴかぴか光っているかしら

 うんもんもはじっと闇に目を凝らしました。
すると、ちらちらと光る粒子が、真っ暗闇の一面に現れたのです。
 
 わあ お星さま こんなにたくさん

 星たちはきらきら輝きながら、ゆっくりと下降していきます。シャリーン、シャリーンというかすかな音が響いてきます。
 
わあ 星が降ってく

 うんもんもは、目を開きました。ふたたびまっしろしろの世界。シャリーン、シャリーンという音はまだ響いています。ちらちらと降ってくるもの……雪です。まっしろな空一面の雪。ゆっくりと、銀色に輝きながら下に降りていきます。うんもんもの毛の先にも小さな雪片がとまっています。銀色の雪たちは、柔らかな朝日に照らされると、ピンクや水色にきらめきます。うんもんもは、雪たちと一緒にゆっくりと降りていきました。

 ベランダの窓をすりぬけてお部屋に入ると、お湯がしゅんしゅん沸く音がして、いつもの朝のコーヒーの香りがしています。うんもんもの毛の先に止まっていた雪のかけらたちはふっと消えてしまいました。いつのもベットの隅に戻ると、きいのちゃんはもう起きて読書しています。きいのちゃんは、うんもんものなかよしのぬいぐるみです。

 きいのちゃーん、あのねー雪降ってきたー それからねー、うんもんもはねーえ、はらぐろい。

 きいのちゃんは、目をぱちくりんとして、本から顔をあげてうんもんもに何か言いかけましたが、うんもんもは、 報告した途端、急にとろんとして、クッションの後ろに半分埋まるようにして眠ってしまいました。目の上の毛が下向きになって眠そうな表情だけれど、目は開いたままじっと動かず、うんもんもはやっぱりふつうのぬいぐるみに見えます。


続く。。。
by shizukushizuku | 2014-11-21 04:24
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